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青天を衝け「栄一、改正する」29話

権威を振りかざし、何も前に進まない。

現代でもそのようなことが起こっているところもあるが、この時代、幕末から維新へ向かい、藩を無くし、国が統一の方向へ動き出したばかりもあってか武士、農民、勝者、弱者の線引きがまだまだ根強く残った社会だった。

それでも渋沢栄一の、ここでいう弱者にあたる徳川の家臣であり、農民出身である人物が世の中を良くしようと改革に乗り出した。

結果を出す人間には次第に周りも認め、向上心のある人たちは勝者も弱者も関係なく教えを請い、その現場の雰囲気の中で活気があれば、皆議論をし始める。

その流れをドラマの中でみて、自分たちが今勤務している会社などはどうだろうかと振り返るには刺激をもらったような気がする。

 

あらすじ

明治政府に出仕した栄一(吉沢 亮)は、各省の垣根を超えた特命チーム“改正掛(かいせいがかり)”を立ち上げ、杉浦 譲(志尊 淳)や前島 密(三浦誠己)を静岡から呼び寄せる。

改正掛は、租税の改正、貨幣や郵便制度の確立など、新たな国づくりのためまい進するが、旧幕臣の活躍を快く思わない一派との対立が生まれてしまう。

そんな中、栄一は、久しぶりに惇忠(田辺誠一)と再会する。惇忠は、新政府に平九郎を殺された傷を抱えていた。栄一は、ひそかに温めていた提案を惇忠に切り出す。

 

徳川家康の語り

明治も2年、末になったというのにまだ新政府は動き出していない。

徳川を倒したあと、一向に前進している気配もない。

当然不安を抱いておりましてね、維新の主役がこのありさまではどうなのかと不満を起こしていた。

外国には文句の言われ放題、日本はそのままの危機状態でした。

そこえ助け船を出したのは皮肉にも徳川の家臣でした。

 

ドラマを観て思うこと

渋沢栄一が提案した大蔵省や民部省、外務省などの垣根を越え、広く日本に必要な物事を考え、即実行できるように「改正掛(かいせいがかり)」が設置された。

改革は改革しなくてはならないと思う人、改革されては困るという人などがそれぞれいるものだ。個の利を考えた時、自分に有利に働くかどうかなど、ふと考えてしまうのである。

それでも、良くするという気持ちが強い程、そのエネルギーの方が勝るのであろう。

 

栄一は静岡藩から杉浦譲や前島密を呼び、改正掛の一員として活躍してもらう。

そして、次々と皆のアイデアを立案・実行していくのだった。

「ここにいる全員が天子様に仕える者として、上下の別なく闊達(かったつ)に意見を交わしたいと思っております。」

栄一は分け隔てなく、良い案をもった人を意見を採用していくのだった。

 

政府が飛脚問屋に支払う通信用の金額より、はるかに安く開設できる飛脚便制度を前島密から提案され、政府に建議書を提出した。

「月一千五百両を費やせば、東京から京都さらに大阪までの区間に毎日一定の時刻、各一便の政府の飛脚便を仕立てることができる。また同時に、一般の通信も取り扱うことにすれば、送達料を取ることができるゆえ、その一千五百両はそのままほかの線路を拡張する基金に回すことができる。」

というのが前島の案であった。

政府は出すほうの資金を抑えようとするが、元来、飛脚に払わねばならない費用をそのまま使うということになるので問題ないだろうということで進めた。

 

この飛脚制度の名称を「郵便」と名付ける事になった。

今私たちが毎日のようにお世話になっている「郵便」である。

そしてその配達料金だが、先に納めるための飛脚印を提案する。

政府で飛脚印と名付けた印刷を作り、これを貼ることで運ぶ料金を先に納める、今の切手の役割だ。

 

その矢先、前島密が鉄道借款(しゃっかん)の処理を命じられ、イギリスに渡ることになり、杉浦譲が後を引き継ぐこととなった。

 

次々と改正に乗り出す改正掛。その動きを良く思わなかった大久保利通に、大隈重信が民部省を追い出されてしまう。

その後、井上馨が上役となった。さて、次の展開はどうなっていくのだろうか?

 

また、改正掛の新たな事業としてお蚕様を育てた経験をもつ、農家出身の渋沢栄一に絹糸を製造を任せられることとなる。

渋沢邸を訪ねてきた尾高惇忠を栄一は新政府に誘った。

だが幕府を倒した新政府に栄一が仕えていることに惇忠は理解できなかった。

「平九郎は新政府に殺されたんだ。首を斬られ、さらされ、いまだ亡骸(なきがら)も見つからねぇ。その政府に手を貸すなど、平九郎にどう顔向けしろと言うんだ!お前はよくても俺にはそんなことはできねぇ。」

栄一は、己が国を作る事を惇忠に指し示す。

「俺たちだって、異人を焼き殺そうとしたじゃねぇか。もう、侍の世はごめんだ。壊すんじゃねぇ。作るんだ。俺は平九郎に顔向けできなくても、できることをする。己の手でこの国を救えるならなんだってやる。」

 

明治4(1871)年3月、新式郵便が開始される。

早速、杉浦譲が弟への手紙を投函、3日後に切手が貼られ判が押された返事が届くようになり、また、惇忠が栄一の言葉をかみしめ、新政府を手伝う決意をするのだった。

 

それぞれの人たちが、新たな一歩を踏み出す回となった。

江戸は藍染め、そして明治に入って絹糸産業へと、ここからがメイドインジャパンの腕の見せ所となっていくのかもしれない。

ゆかりの地の紹介

明治政府は、江戸城の周辺に残された大名屋敷や旗本屋敷を官庁施設に使ってた。

東京都千代田区。栄一が出仕した当時の大蔵省の庁舎は、元は忍藩(おしはん)の上屋敷だった。栄一はこの地で、さまざまな事業に関わっていく。

大蔵省跡(忍藩上屋敷跡)

東京都港区。近代化を急ぐ政府は、新橋・横浜間に鉄道を走らせることを計画。明治3年、起点となる新橋に杭(くい)が打ち込まれ、ここから測量が始まった。

旧新橋停車場

鉄道創設起点0哩(マイル)標識

東京都中央区。東京で最初の郵便局には幕府の御用屋敷が使われた。前島 密(まえじま・ひそか)が江戸時代の飛脚制度を応用した仕組みを考案。その構想を引き継いだ杉浦 譲(すぎうら・ゆずる)により、郵便事業が開始された。

郵便発祥の地(現・日本橋郵便局)

目まぐるしく姿を変えていく東京で、栄一はみんなが幸せになる世の中を目指し、奮闘していくのだった。

 

 

アクセス

大蔵省跡(忍藩上屋敷跡) 東京メトロ「二重橋前」下車すぐ

旧新橋停車場       JR「新橋」下車 徒歩5分

郵便発祥の地       東京メトロ「日本橋」下車徒歩3分

 

 

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