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青天を衝け「栄一、あがく」37話

時代の変換期。

岩倉具視は最期に天皇を中心とした日本の体制を望んで世を去っていった。

そして、明治18年(1885年)12月の内閣制度の移行に際し、初代内閣総理大臣に伊藤博文が就任した。

 

岩崎弥太郎。

渋沢栄一との一等国にするための対立のさなか、志半ばで世を去ることになってしまった。

 

五代友厚。

これからまだまだ渋沢栄一と一緒に世を作り上げて欲しかった人物であったが、自分のやってきたことが後世に残す事ができればそれでよい、ということで去った。

人は永遠に生きられるわけでははないが、やってきたこと、実績は、後世に何らかの形で残されていくものだ。

我々は彼らの歴史から多くのを学びとり、現代を生き、後世につなげていかなくてはならないと改めて感じることができた。

 

あらすじ

政府の命により、再び岩崎弥太郎(中村芝翫)に対抗するため、海運会社・共同運輸会社が設立された。

しかし、栄一(吉沢 亮)は、千代(橋本 愛)を亡くして憔悴(しょうすい)していた。

その様子を見かねた知人らの勧めで、栄一は伊藤兼子(大島優子)と再婚する。

共同と三菱が熾烈(しれつ)な競争を繰り広げ、両社消耗していく中、突然、弥太郎が病に倒れる。

これ以上の争いは不毛と、五代友厚(ディーン・フジオカ)は、栄一と弥太郎の弟・岩崎弥之助(忍成修吾)との間を取り持とうとする。

 

ドラマを観て思うこと

目の前のものにとらわれすぎると、大きな目で世をみることができず、つい我を忘れてしまう。

本来、日本を良くするというところから、いつからか。自分の考えが正しいという我を貫くため、日本国内で無駄な争いをしてしまうことになる。

栄一は政府の支援を受け、合本を主義を貫くべく共同運輸会社を設立。

岩崎弥太郎は一等国の為に自分が強くなり纏めていくべく「三菱」を拡大させようとしていた。

運賃の値下げ競争などでお互いがどんどんじり貧になるも、売られたけんかは買うという、ある意味意地を張ってお互いが商売の鉄則から逸脱した形で競い合うのだった。

栄一も、千代をなくしたことでより大きな目で物ごとを計ることができずに、我を見失ってしまっていた。

 

そんなとき、数年前に没落した豪商、伊藤八兵衛の娘・伊藤兼子を後妻に迎えることとなる。

「渋沢家の家政を任せたい。特に嫡男の篤二はまだ小さく、母親が必要だ。また、財界や政府に世話になっている方が数多くいるゆえ、その方々や家族ともうまく交際し、万事抜かりなくやってもらいたい。」(栄一)

 

この時代の妻とは、こんな理由でするのものなのか、兼子の身にもなるといささか納得ができないのだが、家族と子供を守る、外交的体裁を整えるだけではなく、受け入れるからにはしっかりと見て欲しい。

今までの栄一の性格からして人に対して温かい面をもっていたのであるが、どうしたことか。今回の栄一は少し残念に映ってしまった。

 

話を戻そう。

三菱と共同運輸の競争が、どちらにとっても多大な損失となっていることを危惧した五代友厚。

「三菱と協定を結べ」と栄一にもちかける。

「岩崎くんは、ひそかにこの共同運輸の株を株主から買い集めちょ。もうすでに過半数は三菱のもんじゃ。」(五代)

「岩崎は渋沢の合本の仕組みを使うて、この会社を乗っ取ろうとしとるんじゃ。」(井上馨)

「こげん争いは不毛じゃ。もし共同が勝って三菱が倒れたとしても、今度は共同が第二の三菱になるのは知れたこと。まちっと大きな目で日本を見んか!」(五代)

「これは岩崎さんの独裁と、俺の合本との戦いなんだ!私は、戦いをやめる気はありません。刺し違えてでも勝負をつける。」(栄一)

相手を潰すまでとことんやるのは、日本の企業がお金がなくなり、そのまま行くと外国の船に航路を奪われ、日本を一等国にする道が阻まれてしまう。

そんな中、岩崎弥太郎が死去。三菱と共同運輸、どちらも会社が長くは持たないことを認め、2年半にも及んだ戦いを終えて合併することとなった。

 

その年の秋、五代友厚も亡くなった。

「ありがとうございました。早く体を治してください。五代さんとは、電話や馬車鉄道も手をきびったが、どれもまだ利を得るには至っていない。」(栄一)

「おいが死んでもおいが作ったものは残る。青天白日、いささかも天地に愧(は)じることはなか。

……じゃっどん、見てみたかった。こいからもっと商いで日本が変わっていくところを。こん目で見てみたかった」。(五代)

 

どちらかというと五代は栄一にとって兄貴というか、頼れる先輩的存在。競争相手というのももとより、より良い日本の未来を一緒につくっていく仲間。

渋沢から見た五代はやっかい者で、手ごわくて、ライバル心みたいなものが芽生える相手なのかもしれないが、五代から見た渋沢との関係は、もっと大きく包み込むような存在であったのではないだろうか。

渋沢が成長していくのは五代にとってはとてもうれしいことであり、頼もしい仲間が一人増え、一緒に日本という国をより良い未来に導いていくうえで、渋沢栄一をすごく頼りにしていた。

五代のほうが早い段階でいろんなことを経験し、広い視野を持っていたとのかもしれない。

“東の渋沢、西の五代”といわれるように、場所は違えど、同じ時代に同じ考えを共にする仲間。仲間の頑張っている姿というのは、双方にとって大きな刺激があり、お互いへのエールになっていた。

最後のシーンの「渋沢くん、日本を頼んだど」というセリフからも、“未来を託すことができる友”という関係を感じさせた。

 

五代さんとの会話もあって、少しづつ我を取り戻す栄一。

兼子から離縁を言い出されてしまうが、「家族を守るために力を貸してほしい」と頼み、理解してもらう。

「私は、望まれて妻になりたいなどと馬鹿げたことを言うつもりは毛頭こざいません。しかしそれでも、いくばくかの情がなければ妻にはなれません。きっと私は一生かけても奥様の代わりにはなれません。どうか、離縁してください。」(兼子)

「許してくれ。俺はちっとも立派じゃねぇ。いつも日本のためだとかなんとかいって、目の前のことしか見えていねぇ。だから、頼む。これからは俺をもっと叱ってくれ。俺はどうしても、この家を、家族を守りたい。」(栄一)

 

その後、兼子との間にも子をもうけ、少し篤二の気持ちも気にはなるが、家庭も安泰。

廃止の危機にあった養育院。

千代とあししげく通った場所。栄一はここを買い取ることにした。

兼子の協力のもと、経営に携わるようになる。

うたや兼子の提案もあり、バザーを行い、政府の高官や財界人をできるだけ集め、寄付を募ることにするのだった。

お千代が大事にしていた場所。お千代も喜んでくれているだろう。

「お千代。。。見ていてくれ。」

あがきながらも、栄一は亡くなった人たちからも学び、次へのステップに踏み出していくのだった。

 

ゆかりの地の紹介

高知県安芸市。三菱の創業者・岩崎弥太郎は、貧しい土佐藩士の家に生まれた。

庭に残る石組みは、弥太郎が日本列島を模してつくったものであると伝わっている。

 

岩崎弥太郎生家

大阪府大阪市。土佐藩大坂藩邸跡に鎮座する土佐稲荷神社。

明治の初め、藩邸の敷地内に九十九(つくも)商会が設立され、弥太郎がその事業を受け継いだ。

後に三菱商会へとつながっていくのだった。

土佐稲荷神社

東京都江東区。弥太郎が社員の慰安と貴賓接待のために造成した清澄庭園。

園内には弥太郎が全国から集めた巨石が並んでいる。

清澄庭園

「国家の公益のために仕事をしなければならない」と社員たちに訓示した弥太郎。

その遺志を継いだ息子によって庭園は市民に開放され、後に当時の東京市に寄付された。

明治の経済をけん引した岩崎弥太郎の高い志は、今も受け継がれている。

 

アクセス

岩崎弥太郎生家 土佐くろしお鉄道「安芸」下車 徒歩40分

土佐稲荷神社  Osaka Metro「西長堀」下車 徒歩3分

清澄庭園    都営地下鉄「清澄白河」下車 徒歩3分

 

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