今見直されている渋沢栄一の「論語と算盤」。

たくさんの本が出版されており、わかりやすく漫画になっているものなどもあります。

 

渋沢栄一「論語と算盤」は何故ビジネスマンに読み継がれているのか？

 

■大谷翔平選手と論語と算盤

2021年、アメリカのメジャーリーグで見事MVP（most valuableplayer)に輝いた日本のスター、大谷祥平選手。

アメリカのエンゼルスで大活躍をした大谷選手が全米野球記者協会（BBWAA）の記者代表30名の投票で今季見事に満場一致でMVPに輝いたのです。

 

彼の活躍は二刀流のプレイだけにとどまらず、彼の真摯に向きあう姿、礼儀正しい姿など、その紳士的なふるまいなどで、日本人でも、アメリカ人の心でさえもわしづかみにするほど大人気の選手です。

 

そんな彼の愛読書は、渋沢栄一の「論語と算盤」。

 

実は大谷翔平選手、日本ハム在籍時に栗山監督から配布されたことがきっかけとなったそうです。

 

『論語と算盤』とは、『道徳と経済』を意味します。

一見、と道徳を論語と、儲けを意味する算盤は相矛盾した関係と見られがちですが「異質な二つを両立させ新しい価値を生む」ということが渋沢栄一の教えであり、投手と打者の二刀流で挑み続ける大谷選手は、まさに野球界でしっかり形にしているといます。

 

 

論語と算盤は、大正5年（1916年）に刊行されました。

以降、経営者や起業家に読み継がれており現在にも通じる「道徳と経済」の考え方を学ぶことができます。

 

渋沢栄一は、日本の近代資本主義の父として知られる人物であり、600社近くの起業に関与し、実業の側から近代日本を作ってきた一人です。

論語は、孔子が語った道徳観を弟子たちがまとめたもの。

渋沢栄一は、この論語を少年時代から従兄の尾高惇忠から学び、実業を行う上での規範としていました。

出世や金儲け一辺倒になりがちな資本主義の世の中を、論語に裏打ちされた商業道徳で律する。

そして公や他者を優先することで、豊かな社会を築く。これが、渋沢が積み上げてきた思想でした。

論語と算盤というと、異質なものの取り合わせのように見えますが、渋沢栄一によれば、論語は朱子学として伝承されるうちに解釈を歪められ、富や地位と道徳は両立しないとする思想だと考えられるようになったといいます。

しかし、こうした旧来の論語の解釈に疑問を抱いた渋沢栄一は、道徳と経済の合一説を説きました。『論語と算盤』は論語の解釈を新たに上書き、更新していったものでもあったのでしょう。

渋沢栄一は明治という激動の時代に未来志向で生き、大きな仕事を成していきました。

私達も渋沢栄一のように「論語と算盤」による物事の捉え方に触れれば、日々の仕事においても、これまでとは違った景色が見えてくるかも知れません。

 

企業家の愛読書「論語と算盤」

日本企業の強さは『論語と算盤』の延長線上にあったといえるのかもしれません。

『論語と算盤』は、日本の経済人にとって、迷った時や先が見えない時に立ち返るべき原点なのでしょう。

ガバナンスもコンプライアンスも突き詰めれば、『論語と算盤』で主張される「道義の伴った利益の追求」ということになります。

 

今一度確認してみよう。

■論語＝道徳・算盤＝経済

ひとつは道義を伴った利益を追求せよというものです。

そしてもう一つは、自分より他人を優先し、公益を第一にせよ、という主張です。

要はお金儲け（稼ぐ）をすることと、世の中に尽くすことを両立しなさい、ということです。

こうした考え方は、日本企業に広く浸透し、企業理念に「社会やお客様と共に」といった文言を盛り込んでいる企業は多く存在します。

これが日本人の素晴らしい所でもあり、真心、おもてなしの精神にもつながっていくのかもしれません。